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SS・featuring Sumika

'04年St.Valentine's Day用SS「小噺:Bon appetit,mon amour.」

「よかった、まだ寝てる…」
正直、タケルちゃんが起きてたらどうしようかと思いながら部屋まで来た。
けど、案の定、部屋の主であるタケルちゃんはまるで目を覚ます様子がない。
今日はお休みだから、もうお昼近いこの時間でも寝てて当然かな。

わたしは昨日思いついたことを試そうと、手に持った紙袋から小さな銀包を取り出す。
この銀包の中身が、今日のちょっとした甘い小道具。なんだけど…
「これで、よしっと…」
小道具の準備を終え、わたしは気持ち良さそうに眠るタケルちゃんを起こしにかかる。

ゆさゆさ。ゆさゆさ。無駄じゃないかと思いつつ、まずは揺さぶって起こしてみる。
「ん、何だよ…休みなんだから寝かせろよ」
当然布団に潜り込んだままわたしの方なんか見ず、寝たままのタケルちゃん。
まあ、こんなので起きてくれたら苦労しないし、私の「準備」だって必要ないよね。

次。少し乱暴に布団を引き剥がしにかかってみる。
「ん……寒いだろ…もう少ししたら、起きて一緒に出かけてやるから」
気だるげにそう言って、力ずくで布団を取り返そうとするタケルちゃん。
むー…この間なんてそうやって、夕方近くまでごろごろ寝てたくせにー。

ここまで強情だと、「最後の手」を使うしかない。…でも、わたしに出来るかなぁ?
今日、2月14日だから考えついた方法だけど、やっぱり恥ずかしいしどきどきする。
…これで起きてくれなかったら、わたし本当に泣いちゃうかも。
わたしは覚悟を決めて、用意した銀包の中身に口をつけてベッドの上に上がった。

  *  *  *  *  *

ベッドの上に二人分の体重がかかる。純夏のやつ、また乗っかって俺を起こす気だな。
俺は休みはのんびり寝るって決めてるんだ。いい加減俺の睡眠を尊重して欲しいよな。
まあ、正式に付き合い始めて間が無いからってあいつの気持ちも、分からなくはない。
けど…冬のこの肌寒い朝っぱらから…ん? おかしいな。いつもの「乗っかり」がない。

今までのあいつだったら、間違いなくこの後俺に乗っかって乱暴に起こしにかかった。
付き合いだしてからはちょっと優しくなったけど、俺はそう簡単に起きないから結局一緒。
最後には乱暴に布団を引き剥がされ、叩き起こされるわけだ。
そう言や、一度不意打ちで頬にキスされたっけ。あの時は俺、文字通り跳び起きたな。

今までに無い純夏の反応に妙なものを感じて、俺は布団から頭だけ出して辺りを窺う。
右、左、右…おかしい、純夏の姿がない。と思って天井を見上げてみると…
「んん〜……」
唇にチョコレートを銜えた純夏が俺を見下ろしてる。…チョコレート? なんで?

俺の疑問が顔に出たのか声に出たのか、銜えられたチョコレートが少し降りてくる。
丁度俺の口の位置に合わせて降りてくる。…これを食えということか?
(こくこく)チョコレートを銜えたまま純夏が頷く。このまま口移しで食えということらしい。
チョコレートを食う…チョコレート…今日は、2月、14日。2月14ってことは…

「って、もしかしてお前、俺に口移しでチョコ食えって言うのかおい!」
しかし口にチョコレート銜えてだなんて、今時ラブコメ漫画でもやらねえだろ。
何かそう思ったら、純夏に見下ろされる俺がすっげえ恥ずかしくなってきた。
マジで、本当に、冗談抜きで、今から俺は口移しのバレンタインチョコを貰うのか?

  *  *  *  *  *

「って、もしかしてお前、俺に口移しでチョコ食えって言うのかおい!」
…そう言いながらタケルちゃん、すっごく顔赤くなってる。もしかして、恥ずかしい?
(わたしなんて、この準備でチョコレート買いに行く時から恥ずかしかったんだぞ)
こうして銜えたチョコを差し出してる今も、期待と不安で胸が凄くどきどきしてる。

「……お前、バカじゃないのか? こんな恥ずかしいこと、朝っぱらからさ」
だけど、そう言いながらも両腕でわたしを包み込んで、ゆっくりと引き寄せてくれた。
そのまま胸と胸が重なって、改めて分かった。どきどきしてるのは、お互い様だよね。
わたしも、タケルちゃんも、これからどうするか気付いてて、そのことにどきどきしてる。

どのくらい胸の鼓動を伝え合った頃だろう。わたしの唇から、チョコレートが離れた。
でも、すぐにまたチョコレートが戻ってきた。唇の感触といっしょに。甘くて、温かい感触。
ほんの少しチョコレート越しに唇が触れ合っただけで、頭の中が心地良い空白で埋まる。
胸が更にどきどきする。体がかっとなる。だけどわたし達はチョコの味の唇を重ね合う。

暫くの間囀り合い重ね合い、気がついたら口の中には甘さも温もりも残ってなかった。
「あっ……」気付いてから慌てて目の焦点を合わせる。すぐ正面にタケルちゃんの顔。
よく見たら口元がチョコレートでべたべたになってた。ふき取ってあげようとしたら、
「お前の顔もべたべただろ」って言いながら指で唇を拭ってくれた…えへへ。優しいね。

お互い口元にべたついたチョコレートを指で拭ったり舐め取ったりして綺麗にした。
「いや…まあ、これはこれでいいけどさ…こういう時には口溶けのいいチョコ選べよな」
あはは…そうだよね。わたし、昨日から緊張しちゃって、形と大きさしか考えてなかった。
でもいいや。わたし今、すごく心地良くて嬉しいし…チョコレートも受け取ってもらえたし。



<おしまい…に、しておこうw>
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