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「俺が望むマブラヴ」〜私が渇望し、希求したマブラヴのかたち〜

第八章・後半

慧の<吹雪>が上空からの敵直撃を喰らった時、千鶴機はぎりぎりのタイミングで慧機から横転回避 で離脱して、直撃を免れた。
<獅子の頭>の攻撃は慧機に強烈な打撃を加えてそのまま慧の<吹雪>に対しマウントポジションを取る。両脚で<吹雪>下半身を抑え付け、膨張気味の大きめな両腕で<吹雪>上半身に対し弄ぶ様な殴打を開始する。
「慧、どうして君は分かってくれないんだ? 本当は組織や規律、そういうものに嫌気がさしてるんじゃないのかい? 君やお母さんは散々組織や規律に犠牲になったんだ、僕と一緒に自由で新しい世界を築き上げようじゃないか…」
『っ!……つっ、くあっ…』
<獅子の頭>が慧に対し呼びかけながら、コクピット直上部への緩慢な殴打を繰り返す。幾ら装着し ているスーツや機体構造上衛士が保護されているからと言っても、コクピットへの直撃が続くと間断 なく襲い掛かる衝撃が衛士へあらゆる意味でダメージを与えていく。
「君も、僕と同じ、身も、心も、自由にしよう……! <楽園>への扉を、開くんだっ!」
繰り返される殴打。歪んだ打撃音が強くなり、<吹雪>胸部が次第に撓んでくる。更に繰り返される 無遠慮な攻撃。見ている側に例え難い不快感を感じさせるような、止め処ない蹂躙。

やがて最後の強力な一撃によりキャノピー部分が破損し、攻撃のショックのせいかだらしなく開いて しまう。<吹雪>のコクピットが半ば剥き出しになり、慧の姿が視認できる状態になってしまった。 度重なるショックと打撃のせいか、慧はぐったりしたまま動いていない。
「はぁ、はぁ、はぁ…慧! 今、行くよ……」
<獅子の頭>の両手が<吹雪>の胸襟に無遠慮に手をかけ、コクピット前部を強引に開こうとする。 例えるなら、強姦にも似た野蛮な挙動。相手の同意など最初から求める意思のない蹂躙。

   *   *   *   *   *

そんな無遠慮な挙動を制止しようと急速に落下していく俺と<御門武>だが、不意の機銃掃射を受け て軌道を変えざるを得なくなった。伏兵か?
「って、先生、敵は何機残ってるんだよ?」
『……元々の敵機は残り1機。だけど、伏兵がいたみたいね』
コンソールに触れ、各機状況を表示…って、おい!俺の方に向かって機銃掃射してるのは、委員長の <吹雪>じゃねえかよ!

『あら、白銀君じゃない…早くしないと、彩峰さんが手遅れよ』
「お前の台詞じゃねえだろ、それっ!」
委員長機の迎撃は的確で、思うようには近づけない。と、そこに冥夜の<武御雷>も合流する。
『タケル、どうなっておるのだ? 見たところ、榊がこちらに攻撃を……っ!』
続いて標的となった<武御雷>が素早く回避運動に入る。俺との距離は自然と開く。
「事情は分からねぇが、委員長が土壇場で裏切ってくれたみたいだ」
『なっ! 裏切りなど、如何なる理由であれど許されたものでは…』

委員長は器用にも一人で俺と冥夜両方の足止め役をこなしている。そうして俺たちが踏み止まってる 間に地上で倒れた<吹雪>から彩峰が引きずり出されようとしてるのに…!
「くそ、どうすりゃ…」
『タケル、私に考えがある。…月詠、聞こえるか』
<はい、冥夜様。如何用で御座いましょうか>
旅館で姿を見た覚えはないが、通信に応じたのは確かに月詠さんだ。俺にも音声・映像通話が入る。
『空が寂しい。花火を持て』
<……成る程。畏まりました。少々お待ちを>
『頼りにしている、頼むぞ』
<勿体無きお言葉、尽力致します>
通話が終わり、月詠さんの姿が消える。続いて不敵な笑みの冥夜が俺に呼びかける。
『タケル、花火が上がったら全力で降下して彩峰機の救助を。私は榊を止める』
「……り、了解」
俺が返事をしたところで、空で明るい光弾が数発炸裂する。…花火、これかっ!

俺は迷わず操縦桿とフットペダルに力を入れ、全力で地上に向けて落下せんとばかりに降下をかける。<獅子の頭>の手が<吹雪>の胸襟を完全にこじ開けてしまった。奴の右手がその隙間に差し込まれる。
くそ、あと少し、あと少しで届く…っ!
<御門武>の頭上の光輪が激しく輝く。加速が強くなる。漫画じゃないが、少し頬が引っ張られるよう な、そんな加速の重さを体中が感じ始める。目の前に敵が見える。思うがまま武器を突き出す。

<御門武>の突撃により<獅子の頭>は突き飛ばされ、右手に乗せていた彩峰を取り溢してしまう。
『ああ、慧、僕の慧……どうして僕に、笑ってくれなかったんだい?』
彩峰の方に視点を向ける。空中に放り出され、数瞬の間静止したかのように宙に踊る彩峰。レーダーに目を走らせる。俺も、冥夜も、あいつを助けに動ける位置ではない。間に合わない。駄目なのか… 彩峰が落下し始めた途端、俺が突撃した<獅子の頭>が爆発を起こし、爆風と衝撃に俺と<御門武>は包まれてしまう…思ったより俺への衝撃は来ないが、炎と爆風の混ざった混濁としたものに視界を奪われ、彩峰を見失ってしまう。
「……ね、彩峰…」
『…あゃ…さ……は、…すず…か…しゅ……』
ザー……原因はわからないが、通信系が乱れて使い物にならなくなる。今の衝撃のせいか。まあ、俺は無事だ。問題ない。そう思いながらも、俺はこの時、自分が今までゲーム感覚で戦闘していたことに気づき、憤りを覚えた。 衝動のままに目の前の操縦席を両手で叩き、自分と<御門武>の無事も忘れて怒りに身を振るわせた。 人が死ぬということの重さが、胸と腹の奥底から俺にのしかかる。遊び気分で、俺がいたから…俺がこいつに乗って行っていたのは、ゲームの延長なんかじゃなく、命のやり取りだってことに、今更気付いて腹が立った。

   *   *   *   *   *

<御門武>が格納庫に戻っても、俺は操縦席から出ることができなかった。
うなだれて、照明も落として、ぼんやり操縦席の中を眺めていた。まさか、俺のせいでああなるとは。
「……タケルちゃん、出てきなよ」
やけにぼそぼそ喋る純夏だな。何だ、俺に気を使って呼びに来てくれてんのか。悪いけど…
「暫く、放っといてくれないか…? 俺、今、外に出る気分じゃないんだ」
聞こえるかどうか分からないが、俺は操縦席の中からそれだけ呟いて頭を抱えた。
「…彩峰さんの、こと? 大丈夫だよ」
「えっ? おい、それ、どういうことだよ……純夏?」
ぷしゅー…外部ロックを解除して、操縦席が開かれた。そこに立っていたのは、純夏ではなく。

「……よっ」
体のあちこちが包帯でぐるぐる巻きになった、彩峰自身だった。見回す。純夏の姿はない。え、でも、さっき…
包帯彩峰がコクピットの中に踏み込んでくる。片目を包帯で覆っているせいか足元が多少覚束ない。俺は操縦席から立ち上がって彩峰を支える。一瞬抱き合う格好になる。っと、この感触は本物の彩峰だな。
「……もしかして、死んだと思った?」
柔らかい声で彩峰が訊ねる。不意に俺の目尻を指がなぞる。濡れた感触。俺、泣いてた…?
「……白銀、早とちり」
彩峰の口許が穏やかに緩む。場面が場面なら、いい笑顔だと思ったかも知れない。もしかしてマジで可愛いんじゃねえのか、彩峰って…さっきの仕草のせいか、少し胸が熱くなる。
「え、だって、あの時…」
「私が助けたんですけどー。あのー、二人でいい雰囲気作らないでくれるー?」
その声と共に現れたのは、アホ毛を元気に揺らした制服姿の涼宮だった。なんで、涼宮が…

「やっ」
不意に元気な挨拶を投げかけられて、俺は少し当惑した。そりゃそうだ、さっきまで「死んだ」とば かり思っていた彩峰は(包帯でぐるぐる巻きだが)無事生きてる訳で、更には想定外の有名人・涼宮茜まで登場したのだ。まるで俺を驚かせるために仕組まれたかのような…
「あのー、白銀君? 無視するのは、あんまりじゃないかなぁ?」
「……あ、ああ。悪い。正直、まだ、状況が良く分かってねーんだ。できれば、説明してくれ」
軽く肩を竦めながらも涼宮の顔は笑っていた。
「簡単だよ。私が、空中に放り出された彩峰さんを助けた。それだけだよ」
「それだけ、って……お前が乗るための戦術機なんて、なかった筈だぞ?」
「まーまー。細かいことは言いっこなし。とりあえず、戻って夕飯にしようよ。私、お腹空いちゃった」
涼宮があんまりケロっと明るく話すもんだから、俺も落ち込んでた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。そ もそも、落ち込む原因が無事だったんだしな。
「ああ、そうだな…飯の間に、詳しい話、聞かせてくれるよな?」
「そーゆー話は、彩峰さんに聞いたらぁ?」
半ばからかうような口調で明るく切り返す涼宮。俺は彼女のことを「水泳がすごい奴」程度にしか知ら なかったが、こうして話してみるとこいつの学園内での人気ぶりが分かる気がしてきた。さっぱりして 嫌味がない。たぶん、これはこいつの地なんだろうな。
「彩峰から訊き出せるなら、最初から涼宮に頼まないって」
「だ〜って、彩峰さん?」
「……振られた。しょんぼり」
露骨に俯いて項垂れてみせる。お前、包帯ぐるぐる巻きの割には元気だな。
「って、俺に告白してたのかよ、お前!」
「……馬鹿を言っちゃいけない」
「あー、もう、何でもいいや! 戻るぞ」
何だか馬鹿馬鹿しくなって、いや、気分が晴れて俺は二人を押しのけてコクピットを先に出て行く。 後ろのほうから話し声やらからかう声やらが聞こえてくるが、知ったこっちゃねぇ。
…そういや、涼宮と彩峰って、知り合いだったけか?

戦闘後に開かれたブリーフィングで分かったことは、彩峰の無事を知らなかったのが俺だけだったこと。 そして、委員長は旅館到着後、ずっと整備中だった<吹雪>コクピットに幽閉されていた事実も、戦闘後のブリーフィングで説明された。戦闘中の委員長は別人だったというらしい。いったい誰が委員長になりすましていた?

   *   *   *   *   *

それから夕飯だった訳だが、これがもう思い出すのもおぞましいどんちゃん騒ぎだった。
食べて、飲んで、歌って、騒いで。未成年が殆どという状況で酒を持ち込むか普通…

俺はとっとと阿鼻叫喚の宴を抜け出し、旅館の縁側で涼んでいた。流石にもう、夜も肌寒くなる季節 なので、あんまり長居はできないけど。
(ふぅ……って、大体何で俺達、温泉旅館まで来てロボット乗って戦ってるんだ? それを当たり前のようにこなしてるし、俺(と純夏)以外は全部知ってるような顔をしてるし…しかも今日からここ で泊まり、学校は行かなくていいときてる。何がどうなってるのやら…)

「あ〜、タケルちゃんら〜! な〜に、一人でブツブツ言ってるのさ?」
覚束ない千鳥足で木床を歩いて俺のほうに向かってきたのは純夏だった…って、おいおい、随分酔ってやがるな。
「さがしたんらお〜〜! ほら、いっひょに飲もぉ!!」
足を絡めて、不器用にも顔面から転びそうになる。俺は思わず受け止めに入った。慌てて受けようと したため、俺の体で抱き止める格好になった。丁度俺の体の上に純夏がまるごと乗っかって、俺の胸 の上に純夏の頭が置かれてるような状態。
「って、お前、酒くさいな……!」
やばい。今気づいた。当たってる。純夏の柔らかく程よい感触の膨らみが。口では俺も何だかんだ言ってるけど、やっぱり女なんだなぁ…って、なに意識してんだよ。あと、遅れながら気づいたんだが俺のナニが丁度、倒れこんでるあいつの下腹部辺りに…って、やべ、意識すればするほど意識、てゆーか血液が下に集まっていって…だからそうじゃなくて!

「あ…」
やべ、気づかれた。じゃなくて、動かなきゃ。
「わ、悪ぃ…だ、大丈夫か?」
多分その時の俺の顔は無理して笑って引きつってたんじゃないかと思う。それでも必死に笑おうとした。兎に角、簡単に超えてはいけない一線の上に俺は今いるんだ。落ち着いて踏みとどまれ。
「わたしは…大丈夫、だよ。うん、タケルちゃんとなら、最後まで…」
おいおいおい! 酔ってるとは言え、お前自分が何を言ってるか理解してるのか? つまり俺がお前 をナニでソレしていいって言ってるのか? 俺は、お前と、ガキの頃から、ずっと一緒にいるけど… いいのか? でもまて、今純夏は酔ってるだろ? やっぱ、本当の気持ちを聞かないと…
俺が混乱して動けずにいると、柔らかい感触が俺の腹の辺りを上下し始めた。薄布を通しての感触 だが、場慣れした訳じゃない俺には十分すぎる刺激だ。いや、だから、待てよ、刺激や快感に流されていいことじゃないだろ? なんて綺麗事で宥めようとしても充血は激しくなるばかり。
?……その充血に感触が加わる。って、何かが触れてる!? 浴衣とは違った、柔らかい布が…
「ねえ…ちょうだい……」
「!!」
上目遣いで俺を見る純夏。俺が知らない、鏡純夏。冗談や馬鹿では口に出来ない、「女」の純夏。 いや、待てよ。頼むから、お前の気持ちを聞かせてくれ。そりゃ、俺だってやりたい盛りの学生だ から、据え膳食わぬは…って気持ちがない訳じゃない。でも、相手が、それこそ産まれた時から ずっと一緒にいたと言える娘だ。十何年、一緒に笑ったり泣いたり怒ったりしてきた。その娘を、 自分の反射的な衝動に任せてナニしていいのか? 違うだろ、やっぱり、大切なこと、あるだろ…

「おーい、白銀く〜ん…どこいったのかなぁ〜?」
涼宮の声がこっちに近づいてくる。その瞬間、俺の中に寒気にも似た認識が走る。慌てて純夏の肩 を両手で起こして、倒れた状態から上体を起こし座った状態にしてやる。
「あ…」
小さな息遣いのような呟きが聞こえたが、俺は敢えてそれには答えず立ち上がって呼びかけた。
「おーい、俺、こっち。ちょっと酔っ払いがいるから、運ぶの手伝ってくれ」
「ん、分かった。今日はみんな酔いつぶれてるから、そのまま寝かせちゃお」
俺は涼宮の助けを借りて、純夏を寝室まで運んでいった。できるだけ、肌に触れないようにして。
涼宮はそんな俺から何かを察したのか、黙って運ぶのに付き合ってくれた。

(第八章・おわり)
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