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「俺が望むマブラヴ」〜私が渇望し、希求したマブラヴのかたち〜

序章・後半

休みの学校にこれ以上長居しても仕方ないので、さっさと校門で待ってる純夏を回収して適当に帰ることにした。正直、制服のまま休みを過ごすのは嫌だし。足早に校舎を出ようと歩いて いたら、曲がり角で突然人の姿がぶつかってきた。
「おっと…悪い」
「いや、こちらこそ……?タケルか?」
「ああ…って、何で俺の名前知ってるんだ?」
目の前の女(こいつも制服着てるんでここの学生だってのは分かるが、俺の知ってる顔じゃない)は、いかにも俺が知り合いかのように尋ねてきた。いや、本当に覚えてない。少なくとも俺の知ってる奴に、綺麗な長髪を後ろで束ねて下ろしたような切れ長の目、こんな外見の女はいない。それに前髪が随分とあちこち角張ってる。どっかのロボットで見かけたようなフォルムだ。いや、髪形にフォルムって言葉を使うのも変だが、そんな表現をしたくなる髪型だ。
「え?……ん、ああ、そ、そなたは有名人だからな。…悪いが先を急ぐ。許すがよい」
女は俺の質問に答えもせずに俺が来た方向へと走り去っていった。何だかよく分からん。部活にしては妙な場所を通ってるし…まあいい、待たせてる純夏のところに向かうとするか。待たせたからってどうこう言われた記憶はないが、俺も休みの学校になど長居したくはないしな。 (つーか、あの程度の話だったら別に学校がある日の昼休みでよかったんじゃねーの?) 色々腑に落ちないことはあったが、まああの先生に呼び出されて五体満足元気なままで帰れるんだから気にすることはねぇだろ。 程なく校門が見えてきた。待ってるのは残念ながら純夏ひとり。
「早かったね。どうしたの?」
「いや、よく分からん。少なくとも投薬されて放免とかそういうんじゃないらしい」
「…既にされた後なんじゃないの?それで今日は経過の確認、とか」
お前も涼しい顔して怖いこというな。夕呼先生ならやりかねん。
「あそこで出されるビーカー茶の中に薬が入ってた…って可能性はまぁ、あるかも知れんが。どっちにしてももう帰れるんだからいいだろ。少なくとも今すぐどうにかなるってもんじゃないらしい しな」
そう言って帰ろうと足を下り坂に向けると、純夏のやつ妙に嬉しそうに近づいてきやがる。あのな、お前のそういう行動のおかげで俺はこの学園生活で何気に寂しい思いをしてきてるんだぞ?
「じゃあさじゃあさ!買い物付き合ってよ」
「はぁ?何で折角の休みに、俺が、お前の、買い物なんぞに付き合ってやらんといかんのだ?」
「タケルちゃん、どうせ帰ったら家でゲームとかするだけでしょ?だったらいいじゃない、天気もいいし」
あー、もう、いつもながら面倒なやつだ。女の買い物は長いから嫌だと、何度言ったらこいつは理解するんだ?…まあ、毎度毎度嫌と言いながらもしょーがねえから相手してたら、いつの間にか 恒例行事化されたのかも知れないが(無碍に扱うとお袋経由で報復が来る可能性があるから、結局付き合う羽目になる)、友達と買いに行くとかしてくれよな。
「俺は今日、宿題をやらねばならん。悪いが他をあたってくれたまえ」
「どーせ、宿題なんて学校の机の中でしょ?」
「なら、今から取りに戻ってやる。邪魔するな」
当然そんな気は最初からないし、このかったるい坂をもう一度登ってわざわざ宿題やる根性があるなら、宿題を持って帰ること自体忘れる訳がない。まあ、何と言うか、自分がどうしなきゃならんのか分かっていても、目の前のこいつにだけは素直に応じるところを見せたくないだけの話だ。 …結局、この日は昼前に一度家に帰ってから日が沈むまで純夏の買い物に付き合わされる羽目になった。

   *   *   *   *   *

ここはどこだろう、確か、ここは俺の部屋だ。今寝ている(筈の)家にある部屋じゃない。だけど確かに俺が寝泊りしていた場所。俺の部屋だっていう割には妙に殺風景でベッドと簡素な机程度のものしか部屋の中にはないんだが、それでも俺が俺の部屋でベッドに横たわってるのだけは間違いない。と言うか、今俺は寝てるんだよな?
自分が今目覚めつつあるのか、自分がこれから夢心地に包まれていくのか、自分自身でさえよく分からない状態。だが決して不快な感じではない。
そんなまどろみと目覚めの合間に揺らぐ俺の方を誰かが揺する。 純夏か?…いや、あいつにしては妙に遠慮がちだし、ちょっと機械的な感じがする。ゆさゆさ…ゆさゆさ。
「ん…やっぱ俺、寝てたのか…?」
正直まだゆっくり眠っていたい状態だが、規則正しい揺れは止みそうにない。毛布を捲り上げて体を起こす。昨日の純夏のアレのような事態が起きないよう(何で寝起きでそこまで頭が回るか俺自身が不思議だが)、 ゆっくりと半身を起こし目を開けると、想像してなかった姿があった。黒いウサギ…の、少女?
「ん、んんー…お前が、起こしてくれたのか?」
こくこく。少女は軽く頭を縦に振る。表情といい立ち振る舞いといい、どこか人間性の抜けた機械的な印象を与えているように思う。彼女(でいいのだろうか)は、誰なんだろう。
懐かしいような気もするが、 全く初めて会うような気もする。黒尽くめの服装に黒いウサ耳のような髪飾り、変則的なツインテール様の髪型。何だか、俺が昔純夏に仕方なくやった出来そこないのキーホルダーか何かに似てるような感じだ。
「お前は?…なんで、俺を起こしてくれたんだ?」
返答は無い。ただ、色の割に深みのある蒼い瞳がまっすぐ俺を見据えているだけ。じっと見つめられているのに、不思議と不快感はない。逆にある種の安堵感さえ覚えてしまうような、そんな眼差し。
「えーと…なんだ、その…起こしてくれてありがとな」
何故かよく分からないが、礼の言葉が口をついて出た。
「……おはよう」
微妙に無機質な、だが決して愛想を感じないわけではない挨拶。どうやら言葉は通じているようだ。安心した。だが、今ここで起こされて俺は何をどうすればいいんだ?とりあえず学校に行くとかそういう雰囲気 ではなさそうだが。
そう思いつつも俺がベッドから体を起こして立ち上がると、ウサギ少女(さっきから思い出そうとしてるんだが、名前がわからない)は用が済んだとばかりに
「ばいばい」 一言呟いて踵を返した。
既に開いているドアから外に出ようとしている。
「あー、ちょっと…ちょっと、待ってくれ」
少女が振り向いたところで、不意に何かに包まれてるような、暖かいものに触れたような感触を覚えた。つーか、俺ベッドから出たんじゃないのか?まだ寝ぼけてるのか?

   *   *   *   *   *

「ん、と……!!」
今、何か触ったぞおい。こう、例えるなら「むにゅっ」って感じの感触。柔らかくてすべすべしていて、暖かくて…少なくとも布団や毛布では味わえない感触だろ、これは。いや、待て、もしかしてこれって…?恐る恐る目を 開けると、そこには、立派な、オパーイがっ!
「な、な、何だよこれ!」
「ん…朝からどうした、騒々しい」
え、ちょっと待て?今女の声がしたよな?女って誰だよ?俺に彼女なんていねえ、っつーかそれもこれもバカ純夏が始終俺の近くにいるもんだから、誰も彼もが勝手に勘違いしやがって…って、そういう問題じゃない。それは それで確かに問題ではあるが、今は置いておこう。いやこの胸の谷間が何とも…
「ちょっと待て。何で俺の寝床に女がいる?」
まさかその、ナニを致してしまったってことはあるまいな?しかし、この和式の寝間着ってのははだけた具合が非常によろしい訳で。なんて見とれていたら。
ぴんぽーん、ぴんぽーん♪…ダンダンダンダン!
「タケルちゃ〜ん、朝だよ〜!起きてる〜?てゆーか何で玄関にチェーンロックかかってるのよ!」
純夏のやつ、昨日のことがあったせいかまだ穏やかなようだな。しかし、これは、この状況は誰がどう見てもやばい。って、うちの両親はこの状況を許してるのか、俺が寝ている間に?そんなバカな!どこの世界に見ず知らずの 女と自分とこの息子…って、あの親だったら金で俺を売るくらい平気でやりかねんしな。何だか悲しくなってきたぞ。
「そなたの家の目覚し時計は、随分と賑やかなのだな」
いや、そんなもん鳴っちゃいねえし。てゆーかあんた、どっかで見た顔なんだが…
「ああ〜っ!昨日、俺が校舎から出ようとした時にぶつかりかけた!」
ぶつかった女と恋に落ちるなんてそんな漫画みたいな話があってたまるか。いや、その前にぶつかってねぇだろ、俺。
ガンガンガン!ガンガンガン!
余りにもけたたましい音が鳴ってるんだが、うちの扉は頑丈だな。ふつー、純夏のバカ力であんだけ叩いたり引っ張ったりされたらもう壊れてると思うんだが。
「タケルちゃ〜ん!!起きてるんでしょ〜!!チェーン外して開けてよ〜!」
「………」
いや、ちょっと、この状況で家に上げるわけにはいかんだろ。
「開けてよ〜!早くしないと遅刻しちゃうよ、おばさんいないんだから、タケルちゃんが開けに来てよ〜〜」
そこで女がすっくと起き上がり、軽く寝乱れた和装を整えてから扉に向かって歩き出す。
「おい、何しに行くんだ?」
「あの者を迎えに行く」
…いやだから、お前がいるから俺は玄関を開けないって言ってるんだが。って、そそくさと階段を下りていってるぞおい。自分から下に下りて出迎えに行くやつがあるか。
「ま、待てって!」
なかなか足が速い。下手すると追いつかない…っておい。
「いや、だから、今開けるなって!」
「…え?何か問題でもあるのか?」
ってゆーか、もう鍵もチェーンも開いてるし。ぎゃああ、どっか隠れる場所、隠れられそうな場所は…がちゃっ!
「おっはよぉ〜、タケルちゃん♪今日はやけに…って……」
あ、純夏がフリーズした。
「おはよう、今日は良い朝だな。私もタケルも今から着替えてくるから、少し待って貰えるか?」
…って、貴方は一体誰?何でこの場を仕切ってるんですか?いやまあ、学校に行くから制服に着替えないといかんのは分かるんだが、うちには女子の制服なんて置いてないぞ。どう見たって 純夏の制服じゃああのたわわな胸は納まらんだろうし…っつーか女として比較するのも失礼ではないだろうか。
「た〜け〜る〜ちゃぁ〜〜ん?」
今まで聴いたことも無いような重低音が俺の目の前から響いてくる。危険だ、生命の危機だ。
「さっきの誰?今のどういうこと?わたしの制服って何?どうしてチェーンロックかけたままにして女の人と一緒にいるわけ?どういうこと?ちゃんと説明してもらえる?てゆーか何で おじさんもおばさんも昨日急に旅行に出かけるなんて言って、その代わりにどーしてあの女の人と一緒なわけ?」
超速で繰り出される明らかな詰問。純夏は既に戦闘態勢。
って待てよ、俺は自分の親が旅行に出かけたなんて話を今初めて聞いたぞ。どうなってるんだ、俺の家は?うちの両親は自分の娘が純夏だと思っていないか?
「いや、待て、違うんだって!俺も何のことだか…」
「ふぅ〜〜ん?知らない女の人がタケルちゃんの代わりに寝間着姿で玄関まで開けにきてくれるんだぁ?」
殺意の篭った笑顔。その笑顔が満面に浮かべられているなんて怖いですよ?マズいですよ?
「つっても、知らないものは知らないんだからしょーがねぇだろ」 やべえ。目がマジだ。
「ほぉぉ〜〜〜??(わなわなわな)…そ、その…」
これって、昨日と同じ展開なのではないだろうか。
「??」
「そぉ〜〜のままぁ〜、氏ねぇぇぇ〜〜〜っっ!!」
「えうう〜っ」 今日も今日とて朝から星になってる俺であった。

(序章・おわり)
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