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SS・featuring Meiya

御剣冥夜・生誕祝 「Like a box of chocolate.」Camera G

>>>Camera G・Focus=御剣冥夜

私は漸く、(パーティー用)ホールに続くエントランス(客船のエントランスホールであり、且つホールへの唯一の入り口を備えたエントランスに辿り着いた。
扉を開け放ち、中へ進む。果たしてそこには、甲板上で指揮を取っていたリーダー格のマスケラ兵士が皆流神威を手に待ち構えていた。
「タケルはこの奥か…?」
私は半ば脅しでもするかのように問い掛けた。しかし敵もさるもの、
「その質問には答えられないな。ヒントは無しで探してもらう、そうルールを提示したつもりだが?」
平然と受け流し回答を拒否した。まあ予想の範疇にある返答ではあったが。
「なら、そなたと勝負すれば…答えは出る、ということか?」
答えはない。だが、只ならぬ気配の変化が「諾」を示す。
構えを取り、続けて私の方に向け手にしていた皆流神威を放り投げた。愛刀に対して乱雑 扱いは少々許しがたいものもあるが、これは飽くまで『ゲーム』だ。果し合いではない。自らに受けた不名誉は、自らの手による名誉の勝利で覆せばよい。
私は目の前の相手に勝利し、いつ始まったかも失念した真夜中の船上ゲームを終結させるべく愛刀・皆流神威を抜刀した。もちろん相手を斬るつもりはない。私の刀と技を相手に分からせ、相手の意図を聞き出さねば私としても気が済まぬ。
「私に刀を執らせたのだから、相応の覚悟は出来ているのであろうな?」
「もとよりそのつもり…」
「ならば、参るぞ」
「応」
互いの合図で試合を開始する。

私も相手も、ただ静かに構えたまま微動だにしない。静謐な時間と研ぎ澄まされた空気が照明の落とされた豪奢なエントランスホールを包み、外周部の窓からは漆黒の闇に紛れた夜景の灯火が映り込む。その美しく厳かな風景の中、刀を執り短刀を執る二人の異形。
こんな筈ではなかった。だが、それも今終わらせる。今、私の手で…
暫くの睨み合いから、相手が一歩を踏み出す。探りを入れるような、静かな左足の運び。
駆け出す様子はない。だが、私も気を抜かず相手の正面に回りこむよう横へ静かに動く。
エントランスの空間の中央を睨み合い、互いが互いを見据えあい円の動きを続けて探りを入れる。そんな動きが十数歩続いたところ…相手の姿が影に溶けるように消えた。来るか。
「…っ、そこか!」
落ち着いて狙い済ました一刀。…しかし横薙ぎの一刀は相手の姿も影も捉える事無く空を斬る。いや、確かに相手の影がその場所に身を移した気配を感じたのだが…
「…遅いっ!」
「…っ」
背後からの気配。…そんな、相手は、私の一閃の間にもうあそこまで動いてたというのか。
私は次の一手を考える間もなく床に身を転がし、半ば強引に相手との間合いを開けた。
膝立ちのまま片手で相手に刀を向け、相手の動きから目を離さずにいたものの…
「なっ…」
私が見遣った空中に、相手が斬り流した私の髪が幾本か、宙を舞い残されていた。
慌てて逆腕で髪を撫でて斬られた個所を確かめる…前髪のごく一部らしい。あまりに大仰に髪が宙を待っていたので、もっと斬られたのかと不安になったが。
「御剣が一刀、数多の命を支える一刀と聞き及び、如何程かと思ってみれば…笑止」
鮮やかな緑の長髪を靡かせながらマスケラの女は構えを解く。
「斯様な一刀に人の命が支えられるのか?」
「……そなた、随分挑発的だな。もしや、大空寺の手のものではあるまいな」
調子付いたかに見える相手に対し、私も言われるが侭ではおれぬ。今までは遊戯と割り切り加減をしていたが…或は真剣勝負も止む無しか。私は内心で静かに意を決し、握る柄に力を入れ直し立ち上がった。
「そなたのその問いに、私の一閃で答えるとしようではないか」
「ほう…では、次の一撃で勝負を決めるとしようか」
再び高まる互いの気、静まり返るホール、その静けさのため耳に入る互いの息遣い。
ひと呼吸ひと呼吸に合わせ相手の顔を見、手にした刀を見、体捌きに注意を払い、そして脚の僅かな動きを見る。先程のような不覚を取らず、次の一刀で必ず勝利すべく。
邪念を払い、目の前を凝視しつつもそこに注意を完結させず、意を注ぐは我が一刀、一閃。
一歩、また一歩、呼吸に合わせて互いの間合いが迫ってゆく。緩やかに、着実に。
微かに肌を差す冬の冷気が、私の注意を研ぎ澄ましていく。その注意を両の手の刀に載せ。
一歩、また一歩……そこで。

『真那様ぁ〜、パーティーの準備が出来ましたぁ!』
『出来ましたーっ!』
『でぇ〜きま〜し〜たぁ〜』

相手の腰の辺りから、聞き覚えのある三つの声と名前が鳴り響いた。…真那、というと。
「っ! 何で電源が…」
小声で歯噛みしながら通信機を取り出し、電源を切る相手。あの身のこなし、短刀裁き。
間違いない、この相手は…

「月詠? そなた、月詠だな…?」
そう呼ぶと相手は通信機を握ったままこちらに向き直った。気配が私の問いに「諾」と応じる。
通信機を背に隠したような格好で立ち尽くし、頭だけをこちらに向ける。ここまで来ると単純な感情を口にするような気分にもならない。ただ、事実を確認しようと、落ち着きすぎたくらいの口調で相手に真意を尋ねるだけ。
「月詠か…なら、今私の前でその面を取れ」
「……」月詠はただ立ち尽くし、マスケラに手を架けようとしない。
「……それとも、まだ先程の試合の続きをするか?」
そこまで問い掛けて、漸く恐る恐る月詠から声が返ってきた。
「あの…冥夜様?」
「…何だ?」
普段より多少ぶっきらぼうに応えたためか、月詠は私に探りを入れるように尋ねる。
「…念のためにお伺いしますが…尋常ではなく機嫌を損ねられましたか?」
「そうだな、二人きりのところ邪魔が入ったという事実に関しては率直に言って不愉快極まりない」
「……申し訳ございません。私の出すぎた独断でございます」
姿勢を但し直立して頭を下げる月詠に対し、私は言葉で言った程の憤慨を抱いた訳ではない。「準備が出来た」という言葉から察するに、この向かいのホールで私達の誕生パーティーの準備でも進めていたのだろう。手段はどうあれ、「私のために」何かをしてくれた臣下の者のその気持ちには素直に感謝したい。
「…もうよい。頭を上げろ」
私は刀を納め、多少大股気味にマスケラをつけたままの月詠の肩に手を置いて、
「そなたには罰として、『ゲーム』とやらが終了した後、祝宴の給仕を一人で務めてもらう。それでこの件は帳消しだ…よいな?」
そこまで言い終えてから、含み笑いを月詠に見せた。形式的に過ぎるかも知れないが、主の意に背いて行動を起こした罰は受けてもらわねばなるまい。その責任者(らしき)者に。
「……冥夜様」
「して、タケルはどこにいる? タケルを見つけないと…ゲームが終わらぬのだな、確か」
「パーティーの準備は完了しておりますので、実質時間稼ぎの『ゲーム』は終了ですが…
そうですね、遊びとは言えルールは守りませんと」

そして私は、月詠のマスケラを取り払い、タケルが匿われた目的の場所を聞き出した。


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