×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

SS・featuring Meiya

御剣冥夜・生誕祝 「Like a box of chocolate.」Camera F2

>>>Camera F2・Focus=回想・月詠真那

また私は、独断で行動している。お仕えしている御剣冥夜様の命ではなく、私の独断で。
それは、御剣に仕える私にあってはならぬ事。言わば反逆行為、謀反。しかし…
私は武様の言を実際に行動に移した自分の単純さを嘲い、しかし武様の奔放な発想の中で自らの役を演じることに少しばかりの悦を感じていた。

あれは今夜から数えて二晩前の事になる。
私は12月16日、冥夜様(と、武様)のお誕生日を迎えるに当たり、その下調べのため武様のお部屋に足を向けた。お部屋のドアの前に立ち静かに、しかしドアの向こうに聞こえるように声をかける。多少の修練が必要な声術だが、侍従には必須と言えよう。
「武様、お休みでしょうか」
幸い、ドアの向こうから程なく返答があった。
『月詠さん? …いや、まだだけど、何か?』
「いえ、その…少々立ち入ったお話になりますので、出来ましたらお部屋の中で」
『って、ええっ! いや、その…こんな夜更けにですか?』
…もしかすると、武様は私の来訪の意図を誤解されているのかも知れない。
このような誤解はすぐに解かねばならない、私の立場はそれほどに微妙である。
「いえ…私には『寝取り属性』はございません。今宵は、真面目なお話でございます」
『ああ…済みません、どうぞ中へ』
「はい、失礼致します」
私は静かにドアを開き、足音を立てる事無く室内に移動した。
白銀家のご自室同様に作らせた武様のお部屋。
一般的な御剣の私室よりは随分と窮屈な部屋であるが、武様は「無駄に広いと落ち着かない」と仰る。長らく御剣の御家に奉公してる私でも、このような根っからの庶民であり続けた方は記憶にない。…それはさておき。
「真面目なお話というと……俺、また何かやらかしました?」
苦笑いするでもなく、深刻な面持ちになるでもなく、平然と切り出される。
確かに武様の場合、御剣の家の人間に必要とされる最低限度の資質(平たく言えば帝王学) が欠如しているため、その点で御剣に関わる他のお方から少なからずご指摘を受け、それを不肖ながら私がお伝えする事が時折ある。
そう平然と受け止められても侍従の側の私には複雑なのだが、まあそれは今問題ではない。
「いえ、ここ数日は特に…お話と申しますのは、次のお休みのことなのですが」
「…もう、耳に入りましたか」
「ええ、私も冥夜様の侍従を勤めて短くはありません…あの、年齢を数えないで下さい」
目の前で指折り何かを数え始めた武様を、一応牽制しておく。
…言っておきますが、私の年齢が知られて困るからではありません。悪しからず。
「冗談ですよ……それより、やっぱ…二人だけで街を歩くってのは、問題ありですか?」
「場所によりますが…橘町辺りであれば、問題ありません」
「冥夜といい月詠さんといい…何で橘町なんですか? 何か、企んでませんか?」
確かに理由は幾つかあるのだが、それは御剣の家の事情、お二人のデートそのものに関係があるものではない。ここは敢えて話題を流すとしよう。
「いいえ…それより、武様にお聴きしたいことがあるのですが」
「俺に? プレゼントの内容とか、そういう話は、ちょっと…」
なるほど、そう言えば…プレゼントは用意していなかった。お二人へのお誕生日プレゼントも手配しておかねば。私としたことが…
「いえ、そういった具体的なお話よりはむしろ、もう少し曖昧と申しますか…誕生パーティーのいいアイデアがあれば、と思いまして」

「誕生パーティー、ですか…でも、やるとして会場はどこなんですか?」
そう、今回のお二人の予定からすると、昨年の様な「意表を突く」パーティー会場の設営が難しい。客船のホールに事前準備するとなれば先ず確実に冥夜様か武様に気付かれる。
かと言って、橘町でパーティーのために二人に立ち寄ってもらう場所を用意するというのも、恐らく冥夜様のお気に召さないだろう。ましてや「すかいてんぷる」での誕生パーティーなど論外(立地面などでは最適なのだが…)。
「実は、私もその事で少々悩んでおりまして…」
「でも、やるとしたら船の中しかないんじゃ?」
「そうですね…しかし、お二人での船旅にお邪魔するというのは少々気が引けるのですが」
少しの間難しい顔をして考え込んでた武様が、不意に私に向き直り、
「じゃあさ、いっそ思い切って堂々と準備しに来たら? こうさ、ヘリか何かでだーって降下してく、いつだか白陵柊でやってた昼飯の時みたいな」
およそ冗談としか思えない発言だが、我々が過去実行したことの転用なので不可能な行為ではない。ただ…
「……冥夜様が著しくご機嫌を損ねると思われますが。ご承知の通り冥夜様は、武様とのプライベートな時間に関して非常な注意を払うお方ですから」
以前冥夜様の(初めてのお料理の)ため独断で鑑様にお留守にしていただいた折、冥夜様に厳しく咎められたことは忘れられない。あの時は恋敵である鑑様を対象にしての独断であったが、今回は当事者お二人の邪魔立て。流石に私も気が咎める。
「まあ、その時は俺を悪者にしちゃってよ。俺もグルだったってことで」
「武様…」
「だってさ、俺もその件、冥夜に内緒で話を進めてるだろ? そゆことで」

そんなこんなで、武様の出される突飛な発想を基にして私は実行に移した。
白陵柊での同窓の方々にお声をお掛けしたのは、私の全くの独断。これは武様にもお知らせしていない私なりの趣向。とりわけ、今回の申し出は急な依頼もあって断られるものと思っていたが、お声をお掛けした(鑑様も含め)全員が参画された。ここまでは上出来か。
あと…実際、お二方がお気に召されるかは、この『ゲーム』を冥夜様が最後まで続けて下さるかどうか…だと思いたい。

扉に、私がマスケラの奥から見据える扉に向かって足音が聞こえた。
間違いなく、この足音は冥夜様のものだ。…いよいよ私の出番か。
私は愛用の短刀の柄を一握りし、それから冥夜様の愛刀「皆流神威」を手に執って冥夜様の開門を待ち構えた。


>>>Camera Gへ

>>>冥夜SS・Startに戻る
Copyright 2004 静音@鏡のなかの鑑 All rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-