×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

SS・featuring Meiya

御剣冥夜・生誕祝 「Like a box of chocolate.」Camera F1

>>>Camera F1・Focus=回想・白銀武

慣れない(つーか、初めての)料理をしながら、俺はこの船で今夜出かけることに決めた時の冥夜とのやり取りを思い返してみた。牛丼がどうとか一年前がどうとか言われてみて、今更冥夜の言動に思い当たる節があったから。

『タケル…入っていいか?』
あれは今晩から数えて三日ほど前のことだったか、講義やら実習やら詰め込まれた日常の短い休息時間。俺は前の自宅同様に作ってもらった自室のベッドで寝転んでいた。
「ああ、いいぞ…時間はあんまないけど」
「では、失礼する」
俺はベッドに寝っ転がったまま冥夜の入室を見守った。
「俺の部屋には、別に断りなく入っていいって言ってるだろ? 大体お前は、この家の主なんだからさ」
「それは、その…気持ちの準備が、必要なのだ」
「?? 何の話だ?」
「あー…その・……今度の休みの日の、ことなんだが」
今度の休み…確か、16日。つまり俺と冥夜二人の誕生日の予定の話ってところか。
しかしあれだ、御剣の家の連中も粋なことしてくれるよな。二人の誕生日にわざわざ休みを入れてくれるなんて…まあ、そんな気の利いた取り計らいをしてくれる人なんて、一人しか俺は知らないが。
俺は自分が横たわるベッドの上に静かに腰かける冥夜を見上げながら答えた。
「休み、か…そう言や二人揃っての休みなんて、珍しいよな。どうすんだ?」
冥夜は少し目を泳がせて照れ臭そうな表情を見せて、
「その日…できれば前夜から、二人で外出したいのだが」
「外出? 許可出るとは思えねぇけどな…どうせ許可出ても、警備付きになるんだろ?」
本当に二人でデートというのなら、確かに俺もしてみたい。でも、こいつは…俺が選んだお姫様は、世界に名だたる御剣の当主。俺も御剣の家の中に入ってみて、その凄さを無駄なまでに痛感させられたが、とても手放しで待ちを歩かせていい存在じゃない。
「いや、それは問題ない…前夜は、船で過ごすつもりだ」
「船? 船って…どこ行くんだ?」
「…タケルが去年、純夏と乗った船だ」
去年…ああ、あれか。あの肩肘張った豪華な客船だっけか。そういや、そんなこともあったっけな。
「でさ…何で、あの船なんだよ? 俺、ああいうの合わねぇって話、したと思うけど…」
(私だって、一緒に夜景を楽しみたい…)
今さっきまで泳ぎがちだった視線が、完全にあさっての方向に向いた。…こりゃ、拗ねたな。しかし原因は何だろう、俺何かマズいこと言ったっけか…?
「ん、何か言ったか?」
「何でもない、もうよい…」
言って立ち上がろうとする冥夜の右手を半ば強引に取り、座っていた場所に引き戻す。
そうしながら俺は、気怠げに横たえてた上半身を起こし、引き戻した冥夜を受け止めた。
「もしかしてさ…」
言いながら考える。船…去年…ああ、なるほど、そういうことか。女は色々難しいな。
「純夏と俺がわざわざ豪勢な客船でレシピを投げ捨てて牛丼頼んだことで、妬いてる?」
「……わざとそういう言い方をする、タケルは意地悪だ」
まだ拗ねてるな…でも、拗ねるとこも可愛いかも。って、これは俺の単なる惚気か。
そう思いつつ、俺は背中から柔らかく冥夜を抱き締めて軽く左右に揺すってやる。こういう触れ合いでご機嫌を取るのが、どうやら冥夜には有効らしい。…どうやって編み出したかは内緒だ。俺が恥かしいからな。
「やっぱり、意地悪だ……タケルは」
ん、もう声が柔らかくなってきた。多分今は機嫌を損ねてないだろう。
「で、丸一日海を眺めるのか、今度の休みは?」
俺の質問に対して返答があったのは、随分間を置いてからだった。
「…デート」
「はい?」
「…タケルと、デートする」
俺はその言葉の意味が計りかねた。そりゃあ、世間一般のデートってのなら拙いなりにイメージすることはできる。以前ならよく純夏に付き合わされた買い物だか何だかの延長線…だと思う。
しかし、冥夜にとってのデートってのはどんなものだろう。全然想像がつかない。金持ちがしそうなデートってやつを貧しい想像力で描いてみる。
高級ブランド店でショッピング…冥夜と俺、どう考えても変だ。俺的に却下。
フランス料理だか何だかの食事…テーブルマナーを思い出すだけで、息が詰まりそうだ。
えーと、それから…何だ、ウサギ狩りでもすんのか? 分かんねぇ、全然想像つかねぇ。
「…案ずるでない、普通のデートだ。橘町辺りで、二人で」
「てことは、だ…夜の近海をクルーズして一泊、翌日橘町に出てデート…ってことでいいんだな。俺は、別に俺ができそうなことなら、付き合うけどさ…いいのか?」
「よい…いや、私が…そうしたい」
「分かった、じゃあ…予定ちゃんと空けとけよ? ドタキャン無しだからな?」
こくり。目の前の束ねられた綺麗な長い髪が縦に小さく揺れた。オッケーのサイン。
それから俺は、少しの間次の予定を忘れて冥夜の背中伝いの温もりを堪能した。そう言えば、こうして二人でまったりした時間を過ごすなんて、滅多にないことだな…

俺が次の予定を大幅に遅刻して、色々な人に交代交代絞られたのは言うまでもない。
まあ、せいぜい冥夜の顔に泥を塗ることのないよう、中身で挽回してやるつもりだがな。


>>>Camera F2へ
>>>Camera Eへ

>>>冥夜SS・Startに戻る
Copyright 2004 静音@鏡のなかの鑑 All rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-