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SS・featuring Meiya

御剣冥夜・生誕祝 「Like a box of chocolate.」Camera D

>>>Camera D・Focus=御剣冥夜

私は、再び船内へ戻ることが出来た。
甲板で戦闘した相手=彩峰は私の介抱の申し出を辞退し、マスケラで顔を隠すことなく単身船内へ駆け戻っていった。

「……覆面デスマッチの敗者、だから」
別れ際に彩峰はそう私に言ったのだが、覆面デスマッチというのは正直よく分からない。
彩峰の言い回しが独特なせいか、つかみ所がない。兎も角、私は彩峰の言葉を「再び敵として戦う必要はない」という意味だと解釈した。
「そういえば、彩峰…」
「……?」
私に背を向けて船内に駆け込もうとする彩峰を、私はつい呼び止めた。
「そなた、拳法を嗜んでおったのか? 私に立ちはだかった時、素晴らしい動きを見せていたが、あれは…?」
マスケラの下から彩峰の顔が出てきた時から、私はそれがずっと気になっていた。
彩峰の身のこなし、技の切れ…何れも「運動神経が優れている」だけでは発揮できないものであった。それだけに、彩峰の流派を聞き出せればと思ったのだが…
「……通信教育の教材を、一夜漬けで」
「まことかっ!」
「……もちろん、冗談」
ううむ…タケルの冗談の言い回しは流石に私も分かるようになってきたが、彩峰の場合は表情を出さないのでそこから嘘か誠か読み取ることができず、つい真に受けてしまう。
しかし、彩峰の「冗談」には、不思議と嫌な気分にはならない。私は軽く笑いながら、
「ま、まあ…流石にそれは、冗談か」
「……実は、前にちょっと、知り合いに習った」
「差し支えなければ、流派など教えてもらえぬか?」
もしかするとまた彩峰流の冗談で返されるかも知れないが、あの体捌きの秘訣には興味がある。私は興味を持って尋ねてみた。
「……ちょっとマイナーだけど…詠春功夫」
「ウィンチュン…初めて聞くな。その流派、後学のため覚えておこう。有り難う、彩峰」
「……どういたしまして。じゃっ」
彩峰は真っ直ぐ顔の横で手を翳す。丁度敬礼に似た手の置き方であろうか。私も同じように手を翳し、
「ああ…久々にそなたに会えて、嬉しかった」
彩峰は私の言葉を聞き終えると再び背を向け、船内に消えていった。最後に謎の言葉を呟きながら。
「……19xx年から格闘技を始め、柔道、剣道など格闘技と呼べるものはすべてやっている。皆さん楽しんでいただけましたか? 自分は最善をつくしました……なんてね」

私は船内に戻ってから、潜入スタイルで慎重に船内・船室を探査しているが、最初に彩峰と遭遇して以来、船内では全く敵兵士に出会うことはなかった。この船内で従業員に出会うことは何度かあったのだが、誰に聞いても「黒い軍服の兵士」「マスケラをつけた女の軍人」など見たことがないと返された。
おかしい、あれだけの人数が船内の従業員に見咎められず一斉に姿を消す筈はない。
…しかし、彼らの証言からすると、船外の騒動にも全く気付いた様子はないという。逆に私の方がその騒動についてあれこれ尋ねられ、行動の指針を尋ねられた。
ことを必要以上に大きくし、安全が保証された船員を不安に晒すのもどうかと思われたので、ここは私の独断で「非常訓練の一環でそのような者の出入りがあるだろうが、見かけても抵抗しないように」と伝えておいた。
これなら、万が一潜伏している兵士と船員が遭遇しても私が彼女等の言う「ゲーム」に参加している限り危害を加えられることはない筈だ。何人かの船員に伝え、可能な限りその旨を他の船員にも伝達するよう併せて命じておいた。

私は続けて、船内を探索することにした。
このチャイナドレスという衣装、単純に船内を動き回るだけであればさほど問題にはならないが、先ほどの様な戦闘ともなれば微妙な動き方の違いで苦労することになるだろう。
服もそうだが、このチャイナ様式の靴も戦闘行動には不向きに思える。
できれば、この先の展開に備え、自室に戻って着慣れた私服に着替えたいところだ。
そう考えて私は通路を慎重に確保しつつ、船首側だった甲板出入口から船尾側の自室へと向かうことにした。道中、手すきな部屋を確認してタケルの姿がないかも確認しつつ。
無論、そう簡単にタケルが見つかるようなら相手も仰々しく武装集団を装って登場する筈はないだろうから、念のため、という気持ち程度に。
果たして、私は敵と遭遇することもなく、タケルを発見することもなく自室に辿り着いた。
しかし自室まで簡単ながら捜索しつつ来たことで、タケルの居場所の察しは多少ついた。
私が辿ってきた順路、つまり船首側の甲板出入口を始点として船内外周通路を通って、船尾側でも比較的後方にある私の私室(隣がタケルの部屋だが、当然そこにタケルはいなかった)までの間に敵の姿・タケルの姿がなかった。
ここから推測すると、「船内外周側より、船内内周側の部屋のどこかにタケルが匿われている可能性が高い」と言えるのではないだろうか。私は、自分のこの推測が恐らく正しいものと考え、動きのとり易い私服に着替えてから内周部の捜索に当たることにした。

(冥夜さまのお着替えを、武様以外の殿方にお見せする訳には参りません…編集)

「…うむ」
私は私服への着替えを済ませ、武器になりそうなものを部屋の中で探してみた。
残念ながら、皆流神威の代わりになる道具などそう簡単に見つかりはしなかった。相応に丈のあるデッキブラシを道中見つけたので、それを得物として使うとしよう。武器を使用してはならない、とは言われていない筈だし、私とて身を護る以上に濫用する気はない。
飽くまでも身を守るための得物だ。それを忘れてはならない。
身支度を終えた私は、ドアに耳を欹てて周囲に誰もいないことを確認して自室を退出しようと…したが、足音が聞こえてくる。慌てて私は扉の死角に身を潜らせ、姿勢を低くして足音の動きを追った。うまくは聞き取れないが、複数の靴音が船尾側から船首側に向けて進んでいく。
…これは、もしかすると、タケルを連れた兵士の足音だろうか。今まで一人も船内で兵士に出くわすことはなかった。にも関わらずここにきて聞きなれない靴音が複数響いてくるとなれば、この靴音を追わない手はない。罠の可能性も否定できない、だが「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と昔から言う。ここは追うべきであろう。

私は、多少の危険を考慮に入れつつも足音が十分すぎるか過ぎないかの辺りで自室を出、足音が向かっていった大まかな方向の目星をつけ追跡を始めた。

…このまま進めば、向かう場所は、
「レクリエーションルーム」
「客船ロビー(エントランス)」
「パーティー・会食用ホール」そして「会食用厨房」。
大まかに言ってこの何れか。
今挙げた部屋の何れかにタケルが匿われている。そうであればいいのだが。


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