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SS・featuring Meiya

御剣冥夜・生誕祝 「Like a box of chocolate.」Camera C

>>>Camera C・Focus=とある厨房の一角

「……で、何で俺が牛丼なんか作ってるんだよ? しかもお前が先生役で?」
『しょーがないでしょ、他のみんなは準備で忙しいんだから、タケルちゃんの料理のお守りしてる余裕なんてないんだよ』
「いやだから、その『準備』ってのは何だよ? 例のゲームってやつのか?」
『それを答える義務は、わたしにはないね』
「純夏のくせに、なまいきだぞ!」
『…そんな、どっかのアニメに出てくるいじめっ子みたいな言い回しされてもなぁ。しかも台詞棒読み気味だし』
「冗談だよ、冗談…ほら、何だ、庶民流のエスプリってやつだ」
『エスプリ…ねぇ』
「あー、もう、うるせぇ…とにかく、お前がその『準備』ってのに邪魔になるから、準備に差し支えの出ない俺のお守りをしてるってぇのはまあ、それでいいとしてやろう」
『…相変わらず、タケルちゃんらしい失礼で乱暴な言い回しだね』
「ほっとけ…で、俺が一番聞きたいのはだ、何故、俺が、冥夜のために、わざわざ牛丼を作ってるかということなんだが? 『冥夜に』食わせてやるならもっと他に色々レパートリーってもんがあるだろうが」
『知らないよそんなの…そもそも、最初に牛丼を言い出したのタケルちゃんでしょ?』
「はぁ? …話が全然分からん。俺と会ってない一年の間に、何かあったのか?」
『別に、タケルちゃんと会ってない時期の話じゃないでしょ…船の上で牛丼…忘れちゃった?』
「つーか、質問を質問で返されてばっかりなんだが…俺、もしかして馬鹿にされてるカナ? 馬鹿にされてるカナ?」
『二回言うな……って、はぁ……相変わらずだね、タケルちゃんは』
「まあ…一年程度で、俺がそんな急激に変わるわけないだろ。それは俺が生まれてから一番付き合いの長いお前が一番よく知ってることだと思うんだが」
『そうだね……変わってない、うん』
「あん? どうした、お前まさか…俺と会えて嬉しくなって泣いてるのか?」
『っ! そんな訳ないでしょ、…タマネギの汁が、目に入っただけだよ。馬鹿にするない』
「って待てよ、包丁持った手を俺に向けるな!」
『うるさいなー、料理の最中に変なこと言うタケルちゃんが悪いんだよぉ!』
「いや、待て、分かったから! とりあえずお前の言い分を聞こう! だから、頼むから、手に持った禍禍しい握りの包丁をまな板の上に置け! …いやマジで頼むって」
『……話、終わったら…ちゃんと続き、する?』
「あ、ああ……理由がちゃんと分かったら、やる。そりゃ俺は料理なんて満足にしたことないけど、そんな俺に料理をする理由があるってのなら、俺はやるよ」
『……』

「嘘じゃねえって、な? …取りあえず、一休みしようぜ?」
『…分かったよ。ほんとはルール違反なんだけど、ちゃんとした理由を話すよ』
『去年…さ? わたしとタケルちゃんが、二人でこの船に乗って夜の海に出たこと、あったよね?』
「去年……ああ、お前がハワイに飛ばされてその埋め合わせだか何だか、だっけ?」
『その時、タケルちゃんがメニュー見て料理が分からないからって、この船の支配人さんに牛丼出せって言ったでしょ? …それ、冥夜がちょっと気にしてたんだって』
「いや、別に、気にしてたって…普通に注文すりゃ出てくるだろ? あいつは御剣の当主で、作った人たちは冥夜のために仕えてる訳だろ? 何でそこで俺の初料理が牛丼になる ってことに繋がってくるんだよ?」
『そりゃ…牛丼を普段食べてる人とそうじゃない人の差、だよ』
「んー……ああ〜、そういうことか」
『そういうこと。御剣のご当主が牛丼食べるなんて、普通には有り得ないことでしょ』
「でもなぁ…俺達、あいつと散々庶民じみた料理食い続けてたんだよな、あの時って」
『ん……そうだね』
「それから一年か…お前、あんま変わってないな」
『そう言うタケルちゃんもね。…ちょっとは帝王学とか勉強して、頭良くなってるとか思って期待してたんだけどね』
「悪かったな、ご期待に添えなくて…これでも毎日、分刻みで頭の中に色々詰め込んで頑張ってるんだがな…生まれついての境遇が違いすぎる、そう簡単に俺とあいつの差なんて埋まりやしないさ」
『でも、頑張らないとね…ずっとずっと想ってくれてた、冥夜のためにも』
「……あと、俺の背中を押してくれた、お前の為にもな」
『………』
「………」

『…だけど、選んだのはわたしじゃないよ』
「そうだな…逃がした魚は大きかった…かなぁ……」
『タケルちゃん…そういうの…』
「あー、いや、すまん……今のは、お前の気持ちを軽んじた言い方だった。謝る」
『ほんとだよ…わたし、やっと最近吹っ切れたかな、ってくらいなんだから。ひどいよ、責任取ってくれる?』
「俺はよく分かんないんだけどさ…そういうの、笑って言えるようになるもんなのか?」
『んー…どうなんだろね? わたし、今、笑ってた?』
「何だよそれ…あの時俺はお前に散々言われた訳だが、そういうのって、わだかまりとか未練とか残るもんじゃないのか?」
(お前といい、冥夜といい、ほんと、懐の広い女だよな…)
『何かさ…タケルちゃんってさ、』
「ん?」
『前より人の話、聞くようになった?』
「お前、いきなり随分失礼なこと言うじゃねーかよ」
『だってさー、今までのタケルちゃんからしたら、全然普通に人と会話してるから。そういうこと、わたし以外で誰か言ってなかった?』
「言うかよ…そんな失礼なこと」
『ま、そうだよね…今のタケルちゃんは、御剣家の入り婿見習いだもんねぇ』
「何か、冴えない肩書きだなそれ…つーか、お前の会話のやり取りの方がよっぽど突飛で訳が分からんぞ」
『失礼だなー、これでもわたしなりに、タケルちゃんに合わせてあげてるんだぞ』
「そりゃ、どーも。でもな、俺はやればちゃんとできるヤツなんだよ。知らなかったか?」
『…知ってるよ』
「何だそりゃ」
『何だ…って、言ったまんまだよ』
「お前も相変わらず……まあいいや、それより、そろそろ俺の初料理、再開するか? 俺がやればできるヤツだってところを、ちゃんと形にして見せてやるからな。覚悟しろよ」
『でも、それ食べるの、わたしじゃなくて冥夜なんだけどなぁ…』
「うっせぇ、冥夜の毒見役をお前にやらせてやるってんだ。感謝しろ」
『ひっどいなぁ…それが一年ぶりに会った幼馴染みに対する役の割当てなわけ?』
(ま……今更だけど、散々お前に食わせてもらった弁当への、ほんのお礼のつもりだ)
『え? 何か言った、タケルちゃん?』
「うんにゃ、何も言ってない。それより…さっさと教えろ。牛丼なんてそんな難しいもんじゃねえだろ、俺の初料理でお前達をびびらせてやるからな」
『ふーん…そう言えば、冥夜の手料理って……』


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