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作:水沢葵
「ある日の鳴海家」
☆競作SS展示場
(3)the letter
☆競作SS(第二回)
(2)雨宿り
☆競作SS(第一回)
 
競作SS「ある日の鳴海家」/作:水沢葵
 


//////// 1 昼頃〜柊町、路上〜 ////////

「ふ〜暑いな〜」
6月中旬にも関わらず外は馬鹿みたいにクソ暑い。
雨こそ降ってないものの湿度が高くってじめじめする。
「何だってこんな日に外回りなんか・・・」
ったく・・まぁ雨振りの日よりはいくらかはマシか。
そろそろ会社に一旦帰るかな・・・。
いや、午後からも外回りだしな。
このままどこかで昼飯でも食うとするか。
「孝之〜」
ん?
今誰かが呼んだような気がするけど。
振り返って見ると、
「よう!孝之」
「おう、慎二か」
スーツ姿の慎二が立っていた。
「外回りか?」
「ああ。ったくこのクソ暑いのにやってられねえよ」
「お前も大変だな・・。そういや昼飯食ったか?」
「いや。今から食いに行くとこだ」
「そっか。じゃあ一緒に行かないか?」
「そうだな」



//////// 2 同時刻〜柊町、スーパーマーケット〜 ////////

「ニンジンはあったでしょ・・・。
タマネギは買ったわね、あとは・・・」
「ねえ、ママ、おにくは?」
「大丈夫よ、ほら」
かごを下げて中身を見せると
「わ〜い。かえってはやくつくろっ」
「ほらっ。走ると危ないわよ」
何が嬉しいのかレジの方に走っていった。
まあ、お菓子コーナーでぐずられるよりましか・・。
「あれ?」
さっきこの角を曲がってレジの方にいったはずなのに。
あ、いた・・・って、そこは・・・。
「ねえ、ママこれ買って〜」
はぁ・・・。
やっぱりか。
「もう・・・。お菓子は買わないわよ」
「やだ〜、かってよ〜」
ああ・・まずい・・・。
「駄々こねないの。ほらっ」
いつもいつも買ってたんじゃ、この子の教育にもよくないもんね。
「かって、かって〜」
「はぁ・・・。分かったから。それ一つだけよ?」
「わ〜い♪」
やれやれ・・・。
子供に甘いよねぇ・・・私も孝之も。
「ねぇ、ママ」
「な〜に?」
「パパ、きょうははやくかえってこれるの?
はやくかえってこればかったら、さめちゃうよ?」
あ・・。
そうか、それを孝之に電話して聞いておかなきゃ。
「じゃあ、帰ったらパパにお電話しよっか?」
「うん!はやくかえろっ」
「はいはい、お金払うから、ちょっと待っててね」



//////// 3 昼頃〜柊町、定食屋〜 ////////

「そっか、あの速瀬がねぇ・・。そういや涼宮は・・」
PRRRRRR・・・PRRRRRR・・・。
「ちょっと悪い・・・はい、もしもし・・水月か、どうした? うん・・・。大丈夫だと思うけど・・?はぁ?あ、ああ・・。 分かった。外回りから直接帰るよ。え?ああ・・・。・・・・ うん、パパだよ。大丈夫だって、うん・・・わかってるよ。そ れじゃママにかわってくれるか?・・・もしもし・・・ああ。 わかった、7時までには間に合うようにするよ、それじゃ」
「孝之・・・お前さ・・・」
「どうしたんだ、慎二?」
「絶対、親馬鹿だろ?」
ギクッ!!!
「な、何を言ってるんだよ」
「隠さなくってもいいじゃねえか。電話中ずっと顔がニヤケてたぞ?」
「う、うるせー!子供が出来りゃお前にもわかるって」
慎二の奥さん何ていったっけ・・・。
そう、美紀!美紀ちゃんだ!
「美紀ちゃんもうすぐだろ?」
「ん?ああ、もう7ヶ月だ。孝之んとこはたしかもう5歳だろ?」
「ああ」
「そっか・・・。もう5歳か・・・」
「そういや、さっき、遙がどうしたって?」
「涼宮、2冊目の絵本出すらしいぜ?」
「マジか?」
「ああ、こないだ偶然会ってな。そう言ってた」
「そっか・・・。2冊目かぁ・・・」
1冊目の「ほんとうのたからもの」見つけたとき・・。
俺も、水月も涙が止まらなかったんだよな・・・。
そういや昨夜も、水月が読んで聞かせてたっけ。
「お、もうこんな時間か。孝之、そろそろ行こうぜ」
「ん、そうだな・・・」



//////// 4 夕方〜鳴海家リビング〜 ////////

「ねえ、ママ、パパまだかな?」
「もうすぐ帰ってくるわよ」
時計は7時10分前くらい。
もう6時くらいから「パパまだかな?」の繰り返し・・・。
ったく、孝之ったら何やってるのよ。
ん?今、エレベーターが止まる音がしたような・・・。
「ねえ、ママ、いまエレベーターのおとがしたよ。パパかな?」
「そうかもしれないわね」
がちゃっ。
「ただいま〜」
「かえってきた!」
ドタドタドタ・・・。
「パパ、おかえりなさ〜い」
「ただい・・っと、どうした?」
「おかえり、孝之」
「ただいま、水月。それより、どうしたんだ?」
孝之は突然飛び掛って来た我が子を抱きかかえながら靴を脱いだ。
「ん、その子に聞いてあげて」
「え?ああ・・・どうしたんだ?」
「えへへ・・・。あのね、きょうはパパのひだからね、
ママといっしょにおりょうりつくったの」
パパの日?
ああ、父の日か。
そういえば今日だったな。
「というわけだから、孝之、早く着替えてきて」



//////// 5 夜〜鳴海家食卓〜 ////////

「凄いな〜、こんなに一杯。よく頑張ったな〜」
孝之はそう言って我が子の頭を撫でる。
「えへへ・・・。おかわりたくさんあるからね、パパ」
「おうっ。たくさんおかわりするからなっ」
「うん!」
ったくもう・・・。
孝之ったら親馬鹿なんだから・・・。
「ん?どうした、水月?」
「ううん、なんでもない。それよりほら、食べて食べて」
「あ、ああ。ニヤニヤしておかしな奴だな〜」
「に、にやけてなんかないわよ」
「いや、にやけてるな。なあ?」
「うん。ママなんだかニコニコしてるよ」
「あ〜、もう!いいから2人とも早く食べる!3,2,1,ハイ!」
「はいはい、いただきます」
「いただきま〜す!」
ったくもう・・・。
「ああ、ほういえばさ、水月」
「もう、食べるか喋るかどっちかにしてよ、孝之」
「そうだよ、パパ。たべながらおはなししちゃいけないんだよ」
「ごくんっ。・・悪い悪い。いや、遙なんだけどさ。
 2冊目の絵本、出すらしいぜ?」
「うん、そう言ってた。あれ?孝之に言ってなかったっけ?」
「な、なんだよ知ってたのかよ」
「前から知ってたよねぇ?」
「うん。またママによんでもらううんだよ!」
「なんだよ・・・。知ってたのか」
「ごめんごめん。言うのすっかり忘れてたわ・・・。あ、孝之おかわりは?」
「あ、貰うわ」



//////// 6 30分後〜鳴海家食卓〜 ////////

「あ〜美味しかったぁ〜。ご馳走様」
「ごちそうさまでした!」
「2人とも食べた食器くらいたまには洗ってよ」
「よ、よし、風呂入るか!一緒に入るか?」
「うん!」
「よ〜し、行くぞ!」
「うん!」
「ちょっと、もう・・・。す〜ぐそうやって逃げるんだから」
ったくもう。
「ま、いっか。さっさと洗ってしまうか」
孝之が上がってきたら話もあることだし。
弟かな?
それとも妹?
ふふ、孝之どんな顔するかしら?
孝之が上がってきたらこう言ってやろう。
「ねえ、孝之?家族が一人増えることになったのよ」って・・・。





〜fin〜

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