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作:壮也
アメノフルヨル
☆競作SS展示場
(2)雨宿り
☆競作SS(第一回)
 
競作SS「アメノフルヨル」/作:壮也
 

時を刻む無機質な音だけが響く。
部屋の中央に座り込んで、ただ天井を眺めていた。
明かりも点けず。

遙は一体、何回この部屋に来ただろうか。
ぼうと玄関を眺めていると、今にもドアが開いて遙がやって来るような、そんな錯覚に陥る。

電話機が鳴る。
俺は無視して顔を伏せる。
誰かは分かってる。
だから無視する。
呼び出し音は鳴り続ける。

何十回と続くコール音。
手元にあったクッションを電話に投げつける。
がたん、と音を立てて、受話器が落ちる。

『やっと繋がった……孝之』

受話器から声。
やっぱり、速瀬だったか。

『ちょっと、聞こえてるの? 孝之!?』

…………。

『返事くらいしなさいよ!』

ガァン!

玄関からドアを叩く音が聞こえた。
『ねえ! ドアを開けて!? 孝之!?』

俺は這うように、ドアまで近づいた。

「速瀬……」

「孝之!? ねぇ、鍵を開けて!?」

どん!!
ドアを叩く音。

「一人に……してくれ……」
「いやよ!! いつまで閉じこもってるの!?」

どん!!
再び鈍い音が響く。

「速瀬――――」
「だって、このままほっといたら、孝之死んじゃうよ!?」
「ほっといてくれ……」
「こんなの、こんな孝之、遙だって悲しむよ!!」

「遙だって――――」
ああ――。
「遙だって、きっと――――」
速瀬、お前もかよ……。
「ねぇ、孝之!!」

「お前が遙を語るな!!」

どんっ!!
ドアを殴りつける。

「慰めに遙を使うな!!」

殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る――――。

「孝之!? 孝之ぃ!!」

「帰れ!! 一人に……してくれ…よ」

速瀬の足音が遠ざかっていく。

また部屋へと戻る。


もたれかかった窓から速瀬が走っていくのが見えた。
この雨の中、傘も差さずに。
表情は、見えない。
速瀬は、泣いていたのだろうか。

(す…まな……い……速瀬……)

ふと、壁の時計が目に入る。
「なん……だよ……」
涙は、まだ流れた。


「ちっとも……進まねぇじゃ、ないかよ……」



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