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作:水沢葵
新しい時を刻んで
☆競作SS展示場
(2)雨宿り
☆競作SS(第一回)
 
競作SS「新しい時を刻んで」/作:水沢葵
 


雨が降っていた。

ぴくりともせず、ただその雨に打たれた。

捨てられたから。

いつも彼女と一緒だった。

もう一緒に時を刻むことはない。

時は止まってしまった。

理由は簡単、邪魔だから。

新しい彼氏ができたから。

濡れてないところがないくらいに濡れていた。

唐突に雨が止んだ。

否、止んではいない。

差し出されたのは傘。

淡い桜の様な色の長い髪。

どうしてだろうか?

彼女は部屋に招きいれた。

涼宮 はるか、というらしい。

苗字は表札で分かった。

彼女のお母さんがはるか、と呼んでいた。

はるか、とはどういう字を書くんだろう?

春華?

それとも明花だろうか?

彼女のイメージからすると、遥、かもしれない。

答えは机の上の紙に書いてあった。

遙、と書くらしい。

彼女は私にいろんなことを語った。

3年間近く寝たきりで目を覚まさなかったこと。

3年前にいた彼氏と親友。

その二人の結婚式が今日であること。

さっきは行く前にごみ捨てに来たところだったらしい。

彼女は、彼氏に捨てられたということなのだろうか?

だけど二人の結婚式に行くという。

彼女は言う。

二人とも大事な親友だと。

「ちょっと、お姉ちゃん何してるの?」

がちゃっと、扉が開いた。

赤い髪の女性が入ってきた。

彼女の妹らしい。

「さっきから一人で何言ってるの?」

「え?あ、茜、聞いてたの?」

「うん。中身までは分かんないけどね。それより、時間ないよ」

「え?もう、そんな時間?」

「ほら、はやく、もうお父さん待ってるよ?」

「あ〜ん、待ってよ、茜〜」

立ち上がって彼女は私を手にとった。

「お姉ちゃん、その時計どうしたの?」

「さっきね、拾ったの」

「拾ったって、お姉ちゃ、まあいいわ」

二人は玄関で靴を履いた。

「あ、お姉ちゃん、傘いらないよ」

傘を手に取った姉に妹が言った。

「え?」

「ほら」

彼女が玄関を開けると、外は青く晴れ渡っていた。

まるでさっきまでの雨が嘘のようだった。

「二人とも、用意はいいかい?」

「うん、お父さん」

二人を乗せた車は駅へと走って行った。

その車内で、

「孝之君達の前途を祝しているみたいだね」

と、見事な快晴を見て彼女は言った。

駅に着いたとき、修理のため、私は彼女の父に預けられた。

「じゃあ、気をつけるんだぞ」

「うん、いってきます」

青空の下、二人は歩いていった。

その光はまるで二人を祝しているかのようだった。


~fin~



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